制酸剤として、プロトンポンプ阻害薬やH₂受容体拮抗薬があります。それぞれ異なる作用機序で、胃酸の分泌を抑制します。胃酸の分泌が抑えられることにより、吸収が低下してしまう代表的な薬剤と併用するときについて確認しましょう!
酸分泌量の低下で相互作用を起こす薬剤
イトラコナゾール
イトラコナゾールは、表在性カンジダ症や深在性真菌症に使われ、酸塩基解離定数(pKa)3.7 の塩基性の難溶性薬物です。制酸剤との併用することで消化管内での溶解性が低下し、吸収が低下します。
そのため、併用時はできるだけ投与間隔をあける。
イトラコナゾールは、服用は食直後!
食事による胃酸分泌量の増加、胃の蠕動運動の活発化などの要因および食事内容の脂肪成分の影響により吸収率が高まると推測されています。
ゲフィチニブ
ゲフィチニブは、EGFR(上皮成長因子受容体)のチロシンキナーゼという、がんの増殖に関係する特定の分子に選択的な分子標的治療薬の一つです。EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌に用いられます。
ゲフィチニブの溶解性はpHに依存し,胃内がpH5以下の場合は安定に溶解し吸収されるが,6~7時間にわたりpH5以上となった場合AUCが50%減少したとの報告があります。
そのため、併用に注意する。
エルロチニブ(タルセバ®)
エルロチニブは、ゲフィチニブ同様、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬の一種です。効能効果は以下の通りです。
- 切除不能な再発・進行性で、がん化学療法施行後に増悪した非小細胞肺癌
- EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な再発・進行性で、がん化学療法未治療の非小細胞肺癌
- 治癒切除不能な膵癌
エルロチニブは、pHの上昇により、溶解度が低下すると言われています。
そのため、併用に注意する。
食事によっても吸収に差が出るため、1日1回 1回1錠(150mg 適宜減量)食事の1時間前または2時間以上あけて空腹時投与での用量設定となっています。
アタザナビル(レイアタッツ®)
アタザナビルは、HIV-1感染症に用いられる薬剤です。作用機序は、エイズウイルスのプロテアーゼを阻害します。
消化管内での溶解性が低下することにより、吸収が低下するため、プロトンポンプ阻害薬とは併用禁忌です。
その他の制酸剤に関しても、以下の通りです。
制酸剤<PPI・H2ブロッカー以外>、緩衝作用を有する薬剤(乾燥水酸化アルミニウムゲル、沈降炭酸カルシウム等)
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/62/6250023M1026.html
[本剤はこれらの薬剤投与の2時間前又は1時間後に投与すること(本剤の吸収が抑制されるおそれがある)]。
H2受容体拮抗剤(ファモチジン等)
[本剤とこれら薬剤の併用により、本剤の血中濃度が著しく低下し効果が減弱するおそれがあるので、H2受容体拮抗剤の影響を減少させるために、必ず本剤とリトナビルを併用して投与し、本剤とH2受容体拮抗剤は可能な限り間隔をあけて投与することが推奨され、また、抗HIV薬による治療経験のある患者に、本剤/リトナビルとテノホビルを併用する場合は、H2受容体拮抗剤の併用は推奨されない(胃内pHの上昇により、本剤の吸収が抑制されるおそれがある)]。
添付文書には、本剤を空腹時に服用すると血中濃度が低くなり抗ウイルス作用を発揮できないことがあるため,本剤を食事中又は食直後に服用することとあります。
リルピビリン(エジュラント®)
リルピビリンは、アタザナビルと同じHIV-1感染症に用いられる薬剤です。一方で、作用は異なっており、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が宿主細胞に感染するために必要な逆転写酵素を阻害し、HIVの体内における感染拡大を抑ええます。
リルピビリンも、消化管内での溶解性が低下することにより、吸収が低下します。それにより、作用が弱まるため、プロトンポンプ阻害薬とは併用禁忌です。
その他の制酸剤に関しても、以下の通りです。
H₂受容体拮抗薬(ファモチジン、シメチジン、ニザチジン、ラニチジン)
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/62/6250036F1024.html
[本剤の血中濃度が低下し本剤の効果が減弱するおそれがあるので、これらの薬剤は、本剤投与の12時間以上前又は4時間以上後に投与すること(胃内のpH上昇により、本剤の吸収が低下する)]。
制酸剤<PPI・H₂ブロッカー以外>(乾燥水酸化アルミニウムゲル、沈降炭酸カルシウム等)[本剤の血中濃度が低下し本剤の効果が減弱するおそれがあるので、これらの薬剤は、本剤投与の2時間以上前又は4時間以上後に投与すること(胃内のpH上昇により、本剤の吸収が低下する)]。
服用時間は、食事中又は食直後です。
レジパスビルアセトン付加物・ソホスブビル(ハーボニー®)
ハーボニー配合錠は、 「レジパスビル」と「ソホスブビル」という2種類の薬効成分が入った配合剤です。C型肝炎ウイルスの治療に用いられます。
胃内pHが上昇することにより、溶解性が低下します。胃酸分泌量が制酸剤によって低下すると、作用が減弱します。
そのため、併用注意。
まとめ
今回は、酸分泌量の低下による相互作用についてまとめました。
それぞれの薬剤が、難溶性や塩基性薬物という特徴などから、制酸薬との併用に注意しないといけません。逆に、酸性飲料(コーヒーや炭酸)の服用によって吸収が増加することもあります。
服用タイミングとの関係も知れました。
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